はじっこ。

ごにょごにょ言ってます。

進歩しているのだろうか

「世の中に進歩するものなんてありゃしないよ。
  すべてのものは変化するだけさ。」

早川義夫さんの本の孫引きになってしまうのだけれど、小林秀雄はこんなことを言ったらしい。

たましいの場所 (ちくま文庫)

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偉人はいいこと言うな〜と、何も考えてない大学生のように、そう「考えさせられ」、その言葉はどこかに消えていった。

それからしばらくして、昨日、この言葉をもんじゃ屋でふと思い出したのだった。

 

思い出す約1時間半前、僕は鼻息荒くソフトバンクへゴーした。

2年半使ってたiPhone5が、モタついたり、電池の減りが速くなり、いよいよかということで、あのキラついてる6Sにして僕も話題のセルフィー男子になってやると意気込んでいたからだ。

 

Tokyo graffti(トウキョウグラフィティ) 2015年 11 月号 [雑誌]

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しかし、ソフトバンクは、全然ソフトじゃなった。

 

「あー今のデータ料だと、結構速度規制かかっちゃいますよね?」

6Sの在庫を確認し、席に座るやいなや、ソフトバンクのお姉さんは、僕の通信量を見て、すかさずこう言った。
「そうですね〜割りと…」
「外で使うことが多いですよね?」
「そうですね〜〜(外で使われることが携帯電話言われる所以だろう!)」
「それなら、こちらのポケットWi-Fiの契約もオススメしています。」
「は、はあ。」
「これを契約すると、例えば今のiPhoneに通信量3ギガ分上乗せして10ギガ使えるようにするよりも、オトクに7G分増やせるんですよ!」

 

このとき、いろいろ面倒くさいことになるかもしれないと覚悟を決めた。


この間実家に帰ったときなんて、インターネッツなにそれ?的な家に、ソフトバンクの自宅用Wi-Fiルーターが転がっていた。
きっとあれは、スマホを契約した際にこっちの方が安くなるからと勧められたものなんだろうということは察しがついた。
それに、ソフトバンクのポケットWi-Fiは、やはりこういう勧誘に乗せられ、一回契約したことがあったけど、見事なクソ仕様で即解約した経験があって、(しかも解約料まで取られて溜まったもんじゃなかった。)、もう勘弁だった。
親も親なら子も子だ…。

 

「すいません、Wi-Fiは大丈夫です…。いろいろ持ち歩くの面倒なんで…。」
「ホントですか?絶対オトクなんですよ。今、Wi-Fi契約ときと、しなかったときの料金プラン二つ出すので、ちょっと見てみてください。ほら!」

言ってもいない3G上乗せのデータ通信量10Gプランと、Wi-Fiを契約した際の料金プラン、iPadの画面に映る二つをチラッとみて、

「あ〜こんなに安いんですね〜〜。いや〜でも大丈夫です今回は。」
と、お姉さんを傷つけないように、一回持ち上げてから断った。

 

はっきりと断れず、いつもやんわりと、ふわっと流されるままに生きてきた僕の生き方を察したのか、「今のままより、Wi-Fiを契約した方がいいと」ということをタイミングを見計らったかのように、このあと2回、計4回言われた(漫画「バーテンダー」の佐々倉溜並の把握力か!)。

 

バーテンダー 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

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しつこい勧誘を逃げ切り(それでも通信量を10Gに上乗せした)、もうiPhoneが手に入るぞというときに、また面倒くさいことが起きた。

 

「今回端末のお値段が10万円を超えてしまうので、こちらの書類に記入をお願いします。」と「ご契約書情報申告書」なるものを渡されたのだ。
年収を記入する欄があり、要は審査をするらしい。
が、学生の身分でバイトもほどほどにしかしていない親のスネかじり虫の僕が、これに通るはずがない。

 

「あの、僕学生で、バイトもそんなにしていないので、通らない気がするんですけど…とりあえず収入がこれぐらいなんですよね」
と、正直に記入し提出したら、
「あ〜なるほど…」とお姉さんの顔がラーメンを食うデブのメガネのように曇った。

 

「ちょっとこれだと通らないですね…」

入店してからもう一時間経とうとしているのに、契約できないかもしれない事態が起こった。僕は怒った(ヒップホップか)。

「審査あるなら先にしろよ!」と心の中で100回怒鳴り、怒り狂った僕は「うわーそうなんですね…何か方法ないですかね?」と口にした(臆病者)。

 

結局親に電話し、父の年収でなんとか契約にこぎつけて、命からがらソフトバンク、いやハードバンクを後にした。あのとき親が電話に出なかったらどうなっていたんだろうと思うと今でも怖い。

なぜか勝手にNetflixなどの抱き合わせのオプションに入れられるというハプニングもあったが、テラスハウス全話観て、即解約しようと思っている(まんまと乗る)…。

 

ええいと入ったもんじゃ屋で、ビールを片手に、ハードな1時間を過ごした自分を労い、ハッキリしない自分の性格を呪い、そして大人の事情に振り回されるiPhoneたんを可哀想に思った。 

そして、ふと冒頭の言葉を思い出したのだ。

 

人類は進歩しているのだろうか。

 

契約を増やすことに躍起になって、うんざりさせながら、うんざりしながら、マニュアル通りにお姉さんが動く。

SNSのおかげで、どこにいても、友人の近況を知れるようになったものの、しがらみにがんじがらめなっている。

電車の中では、誰もが下を向き、ソーシャルゲームというファミコン以下のクソゲーを指で転がす。


簡単に手に情報を手に入れようとまとめにアクセスしてみるものの、そこには極端な意見や猫の画像が踊る。


早くなったと言われるインターネットは、速度規制によってダイアルアップ接続なの?という速さでしか読み込まない。

 

誰かの都合で、何かができない。こんなことの繰り返し。
広々とした景色を見ようとしても、車の中からしか見られないような、そんな気分。

 

昔のことは知らないし、ノスタルジックは嫌いだから、簡単に「昔はよかった」なんて言わないけれど(昔には昔の苦労があるはず)、進歩について考えると、悪いことばかりじゃないけど、いいことばかりでもない。

科学技術は進んでいるのかもしれないけれど、人の心はたいして進歩していないのかもしれない。

 

そんな考えてもどうにもならないことを思いながら、もんじゃを食ったので、書類の入ったソフトバンクの袋を忘れてきてしまった。

 

一番進歩してないのは、僕だった…。

 

 

 

マームとジプシー『cocoon』観劇。

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70年前の沖縄が、少女たちの命が、戦場が、

舞台の上に、横たわっていて。

 

そんな命たちが燃えていく様を、

なぜか今生きてしまっている

蚕の糸のように、強くて、長い、

紡がれた命たちで観ていた。

 

誰も死にたくなどなくて、

それでも抗えぬ波に飲まれたときに、

少女たちは走って、死んで、走っていた。

 

会場を出ようとしたときに、

床に置いたリュックには、

舞台に敷かれた砂のつぶと、

70年前の沖縄の面影が、

少しだけ、かぶさっていて。

 

70年後の今に、

「戦争はいけない。」

なんて、わかりきった総体が、

戦争に向かう未来を、

選択しようとしている。

 

そんな中、僕にできたのは、

命を燃やした70年前の人たちと、

目の前で命を燃やしている演者と

重くただよっている不安に

思いを巡らせ、

ただ涙を流すことだけだった。

世界の端っこの方で。

何かに対しての言葉を打ち込むと、特定の誰かの顔が浮かんでしまう。

もしその人に見られたら、傷つけてしまうのではないかと、こっちの臆病から、そっと下書きに入れてそのままのエントリ。

溜まれば溜まるほど、それが人間関係に縛られている自分を表しているように思えてきて。

ならばと、何も気にせず、誰にも邪魔されず、素直に思いを綴れる場所がほしいと思い、このブログを開設しました。

 

世界の中心じゃなくていいので、 

世界の端っこの方で、何かを叫んでいたい。